田中貴金属工業は、金やプラチナなどを、電子部品や燃料電池に使える材料へ加工する会社です。製品を作って届けるだけでなく、工場の端材や使用済みの材料から貴金属を取り出し、再び使える状態に戻します。個人向けには、金・プラチナの地金や純金積立も扱っています。[1・3・5]
簡単にまとめると?
- 電子部品などを作る企業に、用途に合わせた貴金属材料を供給します。顧客が求めるのは、金属そのものに加え、必要な純度・形・性能をそろえる技術です。
- 使い終わった材料を回収し、含まれる貴金属の量を調べ、精製して再利用します。材料供給とリサイクルがつながった事業です。
- 会社の株式は非上場です。同社で金やプラチナを買うことと、田中貴金属工業の株主になることは異なります。
貴金属を、ものづくりに使える材料へ
正式社名は田中貴金属工業株式会社です。1885年に創業し、東京・日本橋茅場町に本社を置きます。グループを統括する「株式会社田中貴金属グループ」や、宝飾品を扱う「田中貴金属リテイリング」とは別の法人です。2025年1月に英語名はTANAKA PRECIOUS METAL TECHNOLOGIESへ変わりましたが、田中貴金属工業という日本語の社名は変わっていません。[1・2]
工業用の貴金属には、電気を流す、腐食を防ぐ、化学反応を助けるなどの役割があります。同社の製品は、電気の接点、薄い金属の膜を作る材料、ガラスを溶かすための白金製装置、燃料電池の触媒などに使われます。触媒とは、化学反応を進みやすくする材料です。[1・4]
たとえば燃料電池では、水素と酸素から電気を取り出す反応に貴金属の触媒を使います。顧客が支払うのは、貴金属の量だけでなく、装置に必要な働きが得られる材料を安定して供給してもらうための対価です。同社は完成した自動車や発電装置を売るというより、それらを作る企業へ材料を供給する役割を担います。[4]
使い終えた材料から回収し、もう一度届ける
貴金属は高価なため、製造中に出る端材や使用済みの材料にも価値が残ります。田中貴金属は、固体のスクラップだけでなく、金属を含む液体からも回収・精製を行います。どれだけ貴金属が含まれるかを分析し、不純物を取り除き、次の製品に使える材料へ戻す仕事です。[3]
図の「販売」から「リサイクル」へ戻る流れが、この事業の特徴です。使った材料を再び製品へ戻せれば、顧客は新たに調達する貴金属の量や費用を抑えられます。ただし、実際に取り出せる量や必要な処理は、回収物の種類・含有量などで変わります。[3・6]
海外での回収体制も広げています。2026年10月21日には、マレーシアの資源回収企業MEPとの合弁会社について発表しました。田中貴金属工業の出資比率は66.7%で、相手企業が前処理した回収物の分析・精製などを担う計画です。新工場の操業開始は2029年4月の予定で、現在の稼働設備や売上として数える段階ではありません。[7]
個人向けの地金・積立も扱う
個人向けサービスでは、金やプラチナの地金・コイン、純金積立、貴金属ジュエリーの買取り「RE:TANAKA」を扱います。工業用材料とは顧客が異なりますが、貴金属の品質を確かめ、売買し、回収するという仕事につながっています。[5]
地金・積立の利用では、金属の価格変動や売買時の手数料などが損益に関わります。これは田中貴金属工業という会社の株式を買うサービスではありません。宝飾品を販売するグループ会社の事業も含め、「田中貴金属」という名称で見かけるサービスの運営法人と商品を確かめることが大切です。[2・5]
新材料の研究を、顧客が試せる段階へ進める
貴金属の新しい用途として、光を検出する材料の研究も進めています。2026年10月には、名古屋大学との共同研究で、銀・硫黄・テルルを使った量子ドット材料を発表しました。量子ドットは非常に小さな半導体粒子で、この開発では人の目に見えない赤外光を検出する材料として使います。[8]
同社が示しているサンプル提供の開始予定は2027年1月です。顔認証や検査カメラなどへの応用が期待されていますが、発表された研究成果を、完成した機器への採用や量産売上と同じものにはできません。既存の材料事業に、新しい用途を加えようとする取り組みとして見ておきたいところです。[8]
売上高と利益は、何を分けて読むか
フルヤ金属が2026年4月16日に開示した田中貴金属工業の財務諸表では、2025年1〜12月の売上高は4,191.77億円、営業利益は92.30億円、当期純利益は238.58億円です。これは田中貴金属工業の単体の数字で、田中貴金属グループ全体の連結決算ではありません。[9]
純利益が営業利益より大きいのは、製品・サービスの営業損益以外の項目も含むためです。この期には、受取利息・配当金、為替差益、地金賃貸収入のほか、投資有価証券の売却益が計上されています。会社の普段の稼ぎ方を読む際は、最終的な利益だけでなく、営業利益とそれ以外の収益を分けて見る必要があります。[9]
事業の仕組みから考えると、注目する点は、顧客の生産量や必要とする材料、回収物を確保できる量、加工・精製にかかる費用です。貴金属の価格が上がっただけで、加工や回収の仕事が同じ割合で増えるわけではありません。新工場や新材料も、計画、顧客による評価、実際の供給という段階を追って見ると、事業への影響を捉えやすくなります。
田中貴金属工業の株式は買える?
2026年11月5日時点で確認した開示では、田中貴金属工業は非上場です。2025年12月末時点の株主は株式会社田中貴金属グループで、保有割合は100%とされています。一般の証券口座で売買する上場株としての購入先はありません。開示資料に記載された証券コード7826は、資料を発表したフルヤ金属のもので、田中貴金属工業のコードではありません。[9]
参考資料
確認日:2026年11月5日。各資料の対象期間、発表済みの計画、現在のサービスを区別しています。
