エイブイシーは、研究で使う真空装置を設計・製作し、改造や保守まで行う会社です。材料を薄い膜にする、表面の状態を調べる、わずかなガスを測るといった実験に合わせて、容器、部品、操作する仕組みを組み立てます。
本社は茨城県ひたちなか市で、設立は1997年です。研究機器を開発・販売するアールデックのグループに属します。冷却部品を手掛ける台湾のAVC(Asia Vital Components)とは別の会社です。
簡単にまとめると?
- 研究者の実験条件に合わせ、真空装置や、その中で試料を動かす部品などを作る会社です。
- 新しい装置だけでなく、既存設備の改造、修理、移設後の立ち上げも支えます。
- 表面・ガス分析や薄膜作製が主な用途で、台湾の冷却部品メーカーAVCとは別法人です。
測りたいものに合わせて、実験の環境を作る
材料の表面や、ごく少量のガスを調べるときには、周囲の空気が測定を妨げることがあります。真空装置は、容器の中の気体を減らし、温度や試料の位置などを管理して、目的に合った実験環境を作ります。
エイブイシーの仕事は、その容器である「チェンバー」だけを作ることにとどまりません。試料を出し入れする機構、加熱・冷却する部品、測定器を取り付ける場所、機器を操作する制御系も設計します。既製品の装置では収まりにくい研究条件に合わせる仕事です。
顧客が支払うのは、金属の箱そのものだけの代金ではありません。必要な位置に測定器を付け、空気の漏れを抑え、繰り返し操作できるようにして、実験を成立させるための設計と製作に価値があります。
分析装置、薄膜作製装置、個別の部品
製品案内には、材料の表面構造を調べる装置、鋼材から出る水素を測る装置、試料の成分を調べる装置などが掲載されています。また、真空中で材料を蒸発させて薄い膜を作る装置や、試料の位置・角度を変える機構も扱います。
たとえば、公式サイトが紹介するHTDS-003は、鋼材の試料を加熱し、出てくる水素を測る装置です。水素が鋼材をもろくする問題を調べる際に使われます。材料の研究を進めるには、分析計の性能だけでなく、試料を入れ替える機構や加熱の制御も必要になります。
カスタム製作では、装置一式だけでなく、実験用の部品一つから設計・製作すると案内しています。真空容器、試料台、加熱・冷却機構を作るほか、新技術の共同開発にも対応する構成です。製品の型番を選んで買う場合と、仕様を相談して作る場合の両方があります。
ガス採取装置に見る、機械と制御の組み合わせ
エイブイシーの製品ページは、「はやぶさ2」が2020年12月に持ち帰ったリュウグウの揮発性物質の分析に使われた装置として、ガス採取装置を紹介しています。会社が説明する役割は、少量のガスを、不要な成分が混じりにくい真空容器へ分けて送ることです。
写真の左側には複数のバルブを動かす機構が並び、右側には操作・制御を行う部分があります。同社は、バルブの開閉順序や速度を制御し、ガスを複数の経路へ分配すると説明しています。これは、単に容器を作るだけでなく、試料を扱う手順も含めて装置をまとめる仕事の具体例です。

ただし、この装置の実績は、会社全体の売上の大きさや、宇宙関連事業の比率を示すものではありません。表面分析、薄膜作製、試料操作などを含む研究機器事業の一例として見るのが適切です。
納入した後の改造、修理、移設も仕事になる
研究の目的が変わると、今ある装置に測定器を追加したり、試料の温度範囲を変えたりする必要が出てきます。エイブイシーのサービス案内は、ポンプの交換、接続口の変更、加熱・冷却機構の追加、自動制御への対応などを挙げています。
修理では、ヒーターや温度センサーの交換、真空漏れの調査・修復、ポンプの整備などに対応します。装置を別の研究室へ移す際の、分解、輸送、再組み立て、立ち上げも案内しています。
研究設備は、新品を納めた時点で役割を終えるものではありません。条件を変えながら長く使うためには、装置の構造を理解している相手に相談できることが役立ちます。新規製作と保守・改造を合わせて見ることで、この会社の仕事の範囲がつかめます。
グループの中の役割と、公開情報で分かる範囲
アールデックの公式案内は、エイブイシーと、装置制御ソフトウェアを手掛けるイーエルシーをグループ会社として掲載しています。機器を選び販売する機能、装置を設計・製作する機能、操作するソフトを作る機能がつながっています。ただし、今回確認した案内から出資比率までは確定できません。
エイブイシー単体の売上高・営業利益や、新規装置と保守・改造の売上比率を比較できる公開決算は、今回確認した資料では見つかりませんでした。会社を見る際には、研究設備の新規導入だけでなく、既存装置を使い続けるための需要、個別仕様への対応力、納期や保守の体制も重要になります。
株式と購入先
2026年11月5日時点で、茨城県ひたちなか市の株式会社エイブイシーの上場銘柄と、日本の一般的な証券口座からの現物株購入先は確認できませんでした。楽天証券・SBI証券・松井証券の公式公開情報でも、この法人の買付案内は未確認です。台湾のAsia Vital Components(3017)や、名前の似た別企業の株式は、この会社への直接投資とは異なります。
参考資料
- エイブイシー「会社案内」(正式法人名・所在地・設立・事業内容)
- エイブイシー「製品案内」
- エイブイシー「分析装置」(各装置の用途・ガス採取装置写真)
- エイブイシー「カスタム」
- エイブイシー「サービス」(改造・保守・移設)
- アールデック「企業情報」(グループ・沿革)
