工場で使う窒素も、病院で使う酸素も、必要な量と品質で届いて初めて役に立ちます。日本酸素株式会社は、こうしたガスを製造・販売し、供給設備の設計や保守まで手がける会社です。大陽日酸という社名で知られ、2026年4月1日に現在の名前へ変わりました。[1・2]
簡単にまとめると?
- 工場や医療機関へガスを届け、使うための設備や保守も提供する会社です。
- 顧客の使用量に合わせ、配管で送り続ける方法、液体で運ぶ方法、容器で届ける方法を使い分けます。
- 上場している日本酸素ホールディングスとは別の法人であり、親会社の株式をこの事業会社の株式と混同しないことが大切です。
ガスを届け、その先の設備まで支える
日本酸素の取引先は、鉄鋼や化学、半導体などの工場から、医療機関まで広がっています。酸素・窒素・アルゴンなどのガスを供給するほか、ガスを作る装置、配管、供給機器も扱います。顧客が支払う対価には、ガスそのものだけでなく、設備やその運転・保守に関わる仕事も含まれます。[2・3・7]
たとえば半導体工場では、製造に必要なガスが工場まで届くだけでは足りません。純度を保ったまま装置へ送り、使い終わったガスを処理する設備も必要です。日本酸素は高純度仕様の配管工事、ガス精製装置、排ガス処理装置なども提供しています。ガスと、それを現場で使える状態にする仕事を合わせて見ると、事業の広がりが分かります。[4]
使う量によって、届け方が変わる
日本酸素は、顧客の使用量や使い方に合わせて供給方法を選んでいます。大型の工場と、工事現場や金属加工の現場では、同じ届け方が適するとは限りません。[3]
- 配管で送る:大量に使う製鉄所などでは、顧客の敷地内や隣接地にガスを作る装置を置き、配管で供給します。
- 液体で運ぶ:中規模の使用先にはタンクローリーで液化ガスを運び、顧客側の貯蔵タンクに蓄えます。
- 容器で届ける:建設工事や金属加工などには、ガスを詰めたシリンダーと呼ばれる容器で供給します。
この違いは、会社を見るうえでも手がかりになります。供給設備が顧客の生産工程に組み込まれる仕事と、充填や配送のネットワークが重要になる仕事があるためです。ガスの販売量に加え、設備を動かし続ける体制や配送能力も事業を支えています。これは同社の供給方法から読み取れる事業上の特徴です。
半導体、医療、ガス製造装置へ仕事が広がる
半導体や液晶の工場向けには、工場のそばにガス供給拠点を設け、高純度窒素や製造材料となるガスを24時間体制で送っています。半導体そのものを作る役割とは異なり、その製造工程に必要な材料と設備を支える仕事です。[4]
医療分野では、病院向けのガスに加え、在宅酸素療法で使う機器の開発・販売・レンタル、定期点検、修理などを扱います。液体窒素を使って研究用の生物資源などを凍結保存する容器やシステムも製造・販売しています。ガスの供給技術が、機器やサービスへつながっている例です。[5]
装置を作る事業では、空気から酸素・窒素・アルゴンを分けて取り出す「空気分離装置」を手がけます。空気を圧縮して冷やし、液化してから成分を分ける装置です。大型の産業設備から半導体工場向けの小型装置まで扱い、低温技術を生かしたヘリウム液化機や宇宙環境の試験装置も設計・製作しています。[6]
売上規模と、事業を見るときの着眼点
公式の会社概要が示す売上収益は、2026年3月期の日本酸素グループ連結で4,265億円です。これは本稿で扱う事業会社を中心とするグループの数字で、日本酸素ホールディングスの世界全体の連結売上とは集計範囲が異なります。[1]
事業を追うときは、顧客の工場がどれだけ稼働しているか、新設・増設で供給設備が必要になるか、ガスや設備を安定して提供できるかを分けて見ると理解しやすくなります。継続してガスを使う顧客向けの供給と、新しい装置の製作では、仕事が発生するきっかけが違うためです。新技術への取り組みについても、研究成果や製品発表と、実際の販売・利益への寄与を区別して読む必要があります。
日本酸素の株式について
2026年3月19日公表の会社資料では、同社の株主は日本酸素ホールディングス株式会社、出資比率100%とされています。この事業会社の株式を、証券会社で一般に売買される上場株として購入する案内はできません。[7]
東京証券取引所プライム市場の証券コード4091は、親会社である日本酸素ホールディングスの株式です。親会社は海外事業なども含むため、本稿の日本酸素株式会社とは投資対象の範囲が異なります。[8]
参考資料
確認日:2026年11月4日。各資料の対象年度・公表日は本文と下記に記載しています。
