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Nexstromはどんな会社? 2D半導体の成膜装置とプロセスを開発

薄い青灰色の膜が白い円形の土台に重なり、そばの枠とともに、薄膜と製造工程を一緒に整える考え方を表した概念画像。

新しい半導体材料が研究室で動いても、そのまま工場で使えるとは限りません。大きなウェーハの上に、同じ品質の薄い膜を繰り返しつくる工程が必要になります。シンガポールのNexstromは、この量産へ向かう間を埋めようとする企業です。成膜装置と材料を育てるプロセスを組み合わせ、半導体の受託製造を担うファウンドリーへの導入を目指しています。[1・3]

成膜装置と材料のつくり方を一緒に開発する

同社が扱うのは、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)という半導体材料です。これを原子数層の薄さで成膜し、トランジスターで電流が流れる部分に使うことを狙います。Nexstromの事業は、完成した計算用チップを販売することよりも、チップメーカーが新しい材料を製造工程へ取り込むための基盤づくりにあります。[1・3・4]

その中心が「North Star」です。原料を気体として供給し、ウェーハ上に膜をつくる装置で、原料の供給、反応する場所の温度、ウェーハの搬送をまとめて設計しています。装置だけでなく、原料の化学反応や成長条件も合わせて開発する点が特徴です。[1・3]

顧客にとって大切なのは、材料の性能に加え、既存の製造工程へ組み込みやすいことです。Nexstromは、業界のパートナーへウェーハ試料を届け、製造工程との適合を検証していると説明しています。ただし、試料の提供は量産装置の販売実績とは別です。装置、プロセスの利用、材料や支援サービスが、どの契約で売上になるかという内訳は明らかになっていません。[1・3]

研究と事業化をつなぐ創業チーム

会社の正式名はNexstrom Pte. Ltd.で、シンガポールの法人です。同社は2024年の創業と説明しています。共同創業者でChief Scientistを務めるLain-Jong(Lance)Li氏は、NUSの教授です。TSMCでは、シリコン以後の電子技術に関する研究を率いていました。共同創業者兼CEOのPhoebe Tan氏は、投資会社XoraのPartnerも務めています。[1・2・3]

NexstromはXoraの企業育成の仕組みを通じて立ち上がり、Xora自身も投資先一覧に同社を掲載しています。研究成果を装置開発や顧客との検証につなぐため、科学だけでなく、事業づくりの経験を持つ人が加わる構成です。一方、創業者や投資家それぞれの持分比率、議決権、支配関係は、今回確認した資料では確認できません。投資を受けていることから、特定の企業の子会社だと判断することはできません。[1・3・4]

1,200万米ドルの調達を、事業化へ使う

2026年9月22日、Nexstromは1,200万米ドルのシード資金調達を発表しました。Xora Innovationが主導し、Foothill VenturesとSEEDSが参加しています。会社は、開発の継続、ファウンドリーとの協業、技術者と経営チームの拡充へ資金を使う方針です。[3]

2026年9月22日の発表 金額
シード資金調達 1,200万米ドル
累計に含まれる非希薄化資金 300万米ドル
累計調達額 1,500万米ドル
資料[3]。非希薄化資金は、株式の持分比率を薄めない形の資金を指します。具体的な提供元や制度の内訳は、この発表では示されていません。

調達額は、売上や利益、現在の現金残高を表す数字ではありません。直近の売上高・営業利益・現金残高や事業別の収益構成は、同社の製品説明と資金調達発表では確認できません。資金面の支援が得られた段階と、製品の採用が続いて利益を生む段階は分けて見ていく必要があります。

12インチ対応の装置と、量産実績を分けて見る

開発の進み具合を読むときは、「どの大きさの装置をつくったか」と「どの大きさで、どの品質の膜をつくれたか」が別の問いになります。登壇資料では、2インチでの実証と12インチへの目標が示され、別のページで12インチ対応の成膜装置が紹介されています。[5]

現行の企業サイトは、2026年の実績として300mmウェーハ上で商用品質のTMD合成を達成したと説明しています。一方、9月22日の発表では、パートナーとの検証や商業生産への移行を進める段階とも説明しています。これらは、装置の対応径、膜の成長、工程の検証という異なる到達点です。会社の表現だけから、大量生産での歩留まりや継続出荷まで確立したとは読み取れません。[1・3]

採用が続く製造工程にできるか

Nexstromの強みとして考えられるのは、成膜装置と材料のつくり方を一緒に改善できることです。顧客が求める膜の品質に合わせて、装置の設計と反応条件を調整できます。その一方で、顧客の工程ごとに適合を確かめる開発と支援が必要になるため、試料の評価から継続的な採用までには時間がかかる可能性があります。

企業としての成長を見ていく手掛かりは、対応するウェーハ径だけではありません。繰り返しつくった膜の品質、顧客側での工程評価、導入の継続、そして収益の開示が伴うか。材料の可能性を、工場で使い続けられる工程へ変えられるかが、同社の事業を読む中心になります。

参考資料

確認日:2026年10月5日。資料[5]は2026年9月2日の作成・更新情報を持つ配布版です。8月の登壇当日と同一の版であることは確認されていません。

  1. Nexstrom公式サイト:製品、沿革、経営陣 (https://nexstrom.com/)
  2. Nexstrom:Terms of Use and Privacy Policy (https://nexstrom.com/terms-of-use-privacy-policy/)
  3. Nexstrom:1,200万米ドルのシード資金調達発表(2026年9月22日、同社発行)
  4. Xora:Nexstrom企業紹介
  5. Lain-Jong(Lance)Li:Two-Dimensional Transistors for Ultra-Low-Power Electronics Beyond Silicon、18・20ページ